職人「コルケイロ」の手仕事

ポルトガルのコルク産業を支えてきたのは、代々受け継がれてきた職人の手仕事です。
「コルケイロ」と呼ばれる彼らは、森と人とをつなぐ架け橋のような存在。
一本の斧を手に、何百年も変わらぬ方法でコルクの収穫を続けています。
樹齢25年以上から始まる収穫 🌳
コルク樫の収穫が許されるのは、樹齢25年以上を超えた木だけ。
まだ若い木は守られ、十分に成長したものだけが人の手を受け入れます。
コルケイロは幹に小さな切り込みを入れ、厚い樹皮を慎重に剥ぎ取っていきます。
この作業には高い技術が求められます。
斧を深く入れすぎれば木を傷つけ、浅ければ樹皮はうまく剥がれません。
自然のリズムを尊重しながら、木と対話するように作業を進めるのです。
受け継がれる知恵と感覚 🪵
職人たちが使う道具は、シンプルにして鋭い斧一本。
力任せではなく、経験と感覚がものを言います。
幹に響く音、樹皮の裂ける感触、木の呼吸 ― そのすべてを頼りに手を動かします。
この技は学校では学べません。
父から子へ、師から弟子へと直接伝えられてきたものです。
収穫の瞬間、森に響く斧の音は、ポルトガルの暮らしと文化を今に伝える鼓動のようでもあります。
森と人を結ぶ営み 🌿
収穫を終えた木は、また9年の時をかけて新しい樹皮を育てます。
職人はその木を忘れず、再び巡る季節に同じ森を訪れます。
一本の木と、ひとりの職人が、何十年にもわたって対話を続ける。
この循環があるからこそ、コルクは「伐らない森の恵み」として世界に知られています。
そしてその背後には、目立たぬながらも確かな職人の技と誇りが息づいているのです。
コルケイロの手仕事は、単なる収穫ではなく、自然との調和そのものです。
森を守りながら恵みを受け取り、次の世代へとつなぐ営み。
その斧の一振りに、ポルトガルの文化と未来への約束が刻まれています。